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2010年9月 9日 (木)

「家紋主義宣言」(河出書房新社)―日本の精神文化伝承の道標

今日は9月9日、重陽の節句。古代中国では「九」という数字は最高のものとされており(「十」は数の頂点に立つものですが「満つれば欠ける」という意味から好ましくないとされています)、「陽」が満ちて極まっている状態で、最高の数、天の数とされたのだそうです。九月九日はその「九」(つまり陽)が二つ重なっているので、重陽と呼ばれています。

中国から日本にこの重陽の節句が伝わり、「菊の節句」とも言われて菊を鑑賞し菊の花を浸したお酒を飲んで不老長寿を祈念しました。栗飯を炊いて祝う風習もあり「栗の節句」とも言われています。しかし残念ながら日本では、陰暦から太陽暦に変えられたときに9月9日が菊が咲き誇る時期ではなくなってしまったため、明治時代以降に廃れてしまい、現在では殆どこの節句を祝うことはなくなってしまいました。

このように一国の文化、風習というものは、時代の変化によって消えてしまうことがあります。特にこの日本では、明治維新、太平洋戦争敗戦を経て、消えてしまった風習が少なくありません。先日紹介いたしました民俗学は、昔から伝えられているもの(習俗、口承文芸、民具など)をフィールドワーク、聞き書きを行い、掘り起こす学問なのですが、まだ僅かに残っているものを書き記し保存しながら「伝承」する役割も持っていると思うのです。とにかく誰かが書き留めたり、ものを保存したりしなければ、ただ消滅してしまうだけです。そしてそうすることによって、自分の先祖に思いをはせるのが民俗学であると思うのです。さらに、何らかの形で今、そして未来に過去のものを活かせることもあるであろうと思うのです。

  

Photo前置きが長くなってしまいましたが、何故ここのところ民俗学の話題を記事にしてきたかと言いますと、最近拝読した『家紋主義宣言』という本に、この民俗学的な「伝承」の部分を強く感じたからです。『家紋主義宣言』の著者であられる西村昌巳さん、このブログにもコメントを頂いている「まさむねさん」がお考えのテーマは実に壮大なもので、今後大きく変ってしまうであろうこの国の精神文化を、「家紋」を通して「伝承」を図っていこうとする力強い宣言として、私は強く感銘を受けた次第です。第一章で、まさむねさんは次のように語られています。

「日本人ならば誰でも持っている家紋には、少なくとも自分の先祖の誰かが、そのシンボルを選択したという動かしがたい事実がある。家紋には、はるか先祖が抱いた切実な祈りや、誰にも負けない誇りや、曲げられない反骨心や、美意識の結晶や、ささやなな願望が込められているのだ。家紋を眺めていると、僕らの先祖が現代の日本人一人一人に静かに語りかけてくれる様々な物語がほのかに浮かび上がってくる。そんなロマンチックな眼を開いてみよう。それが僕がこの『家紋主義宣言』で一番言いたいことである。」

この一節を読ませて頂いた時、まさむねさんの並々ならないお気持ちを感じ、今後もこのブログで、何回かに分けて自分の感じたところを述べさせて頂こうと思いました。

まさむねさんは実に幅広い知識をお持ちの方で、このご著書にも、歴史、文学、音楽、そしてプロレスと、多岐にわたる知識を通じて「家紋」の話を展開されています。その意味では、大変読みやすく、説得力に溢れた内容で、家紋に全く興味がなかった人でも必ず引き込まれてしまうと確信します。たとえば「ジョン・レノンにも家紋がある」と言われたら、このブログを読んでくださっている方々は、「えっ?」と思い、興味を惹かれるのではないでしょうか。(笑) 今年ブームとなっている坂本龍馬も、家紋を通して見つめてみると、その人物像が浮かび上がってきます。また、歴史上の人物だけでなく、ミスチル、w-indsをはじめとして現代のアーティスト、芸能人、政治家、文学者などをあげられ、まさむねさんの「守備範囲」の広さに驚かされ、彼らの家紋を通して展開されるこの本の深い内容に感動させられてしまうのです。

是非、まさむねさんのこのご著書をご一読頂いて、皆さんがご自分のお家の家紋を通じて先祖に思いをはせ、その家紋に込められた意味を知って頂き、さらには現在を、そして未来を生きるための道標として頂ければと思います。

重陽の節句の日を敢えて選び、つたない文章ですが、素晴らしい一冊の本を紹介させて頂きました。今後も『家紋主義宣言』に関する記事を書かせて頂こうと思っております。まさむねさん、ご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

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