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2010年7月16日 (金)

曾祖母のこと

今日は東京では「送り火」。お盆で思い出すのは、千葉に住んでいた時、母方の曾祖母に連れられて提灯を持って川の近くまで行き、灯りを消して帰ってきたこと。まだ幼少だった私には、これがどういう意味か分かりませんでした。

曾祖母は明治生まれのはっきりした人で、厳しい中にも優しい性格を持ち合わせた人でした。子供の頃、私は祖母よりもその曾祖母との関係が強かったのです。赤ん坊の頃の写真にも曾祖母が写っているし、幼稚園の頃は一緒に近所の映画館へ行ったり、ラーメン屋で何故かカレーを食べたり、いろいろな思い出があります。一緒に母の実家の五右衛門風呂に入ったこともあります。

曾祖母の実家の先祖は、紀州湯浅の湯浅太郎左衛門英国で、ちゃんと古文書も残っています。楠正成の郎党との戦に敗れ千葉に逃げ延びてきたようです。千葉のある地域には湯浅姓が非常に多いのですが、もともとは和歌山県の湯浅町にいた一族のようです。戦に敗れ、全国に離散したとのこと。曾祖母の実家は千葉のその地域の湯浅本家とよばれていたようです。

曾祖母はまだ子供の頃に奉公に出され大変苦労したと、湯浅の本家のおじいさんから聞いたことがあります。曽祖父と結婚し、店(乾物屋)を持つまでになり、昭和30年代後半から40年代にはかなり大きな店(スーパーマーケット)になりました。隠居した曾祖母は店員のために毎日食事を作っていました。私も店員と一緒によく食事をしましたが、この釜で炊いたご飯がとてもおいしく、味噌汁も煮干が入ったままで出汁が利いた大変おいしいものでした。そして漬物の味も忘れられません。実は、その昔、皇族の梨本宮様が千葉のこの地にいらした時に、曾祖母がご馳走を作ってもてなしたことがあり、その後梨本宮様から御礼の品が曾祖母のもとに届けられました。

店が大きくなり、近所の同業の店がしぼんで行くのを気にしてか、曾祖母はそういった店に行き買い物をしていました。ある日、私に「やびな(「一緒に来なさい」の意味)」といって、すっかりさびれてしまったお菓子屋へ行き、チョコレートとコーヒー牛乳を買ったのです。店が大きくなることで、地域の人が苦しんではいけないと考えたのではないかと思います。曾祖母はその後もたびたびその店で買い物をしていました。その店のおばさんも「ご隠居さん、いつもありがとうございます」といって、お互いに心が通じていたようです。

大正時代、関東大震災の時、暴動が起きて店が襲われ食料品を盗まれたそうで、その時曾祖母が言った言葉が「放っておきなさい!でも、盗んでいった奴らの顔はしっかり覚えておきなさい!」だったそうです。曾祖母の毅然とした性格がわかるエピソードです。

ある日私は「おばあちゃん、なんで茗荷を食べると馬鹿になるの?」と聞いたことがあります。曾祖母は「それはね、昔インドに頭のすごく悪い人がいて、茗荷ばかり食べていたんだよ」と教えてくれました。後に仏教に興味をもったとき、説話で「チューラ・パンダカ」という頭の悪い男の話が出てきた時に、曾祖母の話と繋がりました。

曾祖母は1975年5月31日に92歳で亡くなりましたが、その数カ月前に私と兄を呼んで手を握りながら「おまえたちが可愛くてしょうがないんだよ。ばあちゃんが死んだらおまえたちの神様になってあげるからね」と話してくれました。葬儀は今では考えられないくらい大きなもので、母の実家の周りにはものすごい数の花輪が並びました。

明治生まれの一本筋が通った曾祖母。幼き頃に曾祖母から聞いた話、そして曾祖母が見せた周りへの気配りは一生忘れることがないかもしれません。

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コメント

Oyataさん、今日は!

明治生まれの人はやはり違います。厳しいけれども気配りがある。苦労した分だけ人に優しくなれる。今の日本人にこれがあるでしょうかね?

私が「明治」という時代を感じることができるのは曾祖母を通してですね。

投稿: JUN LEMON | 2010年7月17日 (土) 13時07分

明治時代の人の気骨、筋の通った生き方、善悪の判断とかは今の日本人とは別物という気がします。

特にここしばらく日本人はどんどん成り下がっていって自信もなくモラルもなく・・・

ひいおばあ様は、JUN LEMONさんの生きていく力の源泉になっているように感じました。

投稿: Oyata | 2010年7月17日 (土) 12時37分

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