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2010年4月 1日 (木)

柳家小三治独演会(赤坂区民ホール)

赤坂区民ホールの小三治独演会へ行って来ました。一昨年から数えて、小三治師匠の高座には十数回足を運びましたが、この日の演目は、長い間待ち続けた『猫の皿』。一昨年、小三治師匠はこの『猫の皿』をたびたび演じてこられたようですが、私はなぜかずっと聞けず仕舞い。以前聞いたのは、平成7年の国立劇場だったと記憶していますので、実に15年ぶりということになります。そしてもう一方の演目は『品川心中』でした。

思い返せば、小三治師匠の高座を生で初めて聞いたのは平成4年の6月、池袋芸術劇場小ホール(演目は『茶の湯』)。それより前はTV、カセット・テープで聞き、文庫本で何度も読み返していました。何故か他のどの噺家よりも小三治師匠が気に入り、3年前に東京に引っ越して来てからは、数え切れないほど独演会などに足を運ばせて頂いています。

今回の前座は柳亭燕路師匠。『たらちね』を聞いているうちに、「あれっ?誰かに似ているな」と感じ、思い起こしていたのですが、それは燕路師匠の弟子、こみちさんでした。つまり、こみちさんは、師匠の芸をしっかり吸収して演じていたということです。それにしても恐ろしいほど似ていました。昨年7月のサンケイホールでの一門会で、小三治師匠が「こみちの話し方は速すぎる」とおっしゃっていましたが、今日の燕路師匠の話す速さとほとんど同じなのです。

そしてお目当て、小三治師匠の高座となり、マクラは刀の話でしたので、「もしかしたら骨董ということで『猫の皿』をやってくれるかな」と思っていましたら、予想どおりでした。15年ぶりに聞く小三治師匠の『猫の皿』はより深みのあるものとなっていました。風景の描写、人物の心の動きを、実に細かく演じておられました。今日はこの演目を聞けただけでもう幸せな気分になってしまい、『品川心中』も素晴らしかったのですが、印象が薄れてしまいました。

夏目漱石は大の落語好きだったそうですが、特に上方落語を江戸へ持ち込んだ天才噺家、三代目柳家小さんのファンだったようです。(漱石は亡くなる数日前にも小さんの『うどんや』を聞いていたそうです)彼は『三四郎』の中で「彼(小さん)と時を同じうして生きている我々は大変な仕合せである」と書いていますが、私は今、同じことを小三治師匠に感じています。これから何度、師匠の高座を拝見できるのかわかりませんが、毎回しっかり脳裏に焼き付けておきたいと思っています。

柳家小三治がいるこの時代に、素晴らしい芸術を堪能できる幸せを感じながら、帰宅の途につきました。

今、どうか若い人たちに、この日本の優れた話芸を深く味わってもらいたいと切望しています。いまだに欧米の音楽やその他の芸術にばかり偏っている現在の状況からは、とても日本の文化が引き継がれていくとは思えないからです。そして、日本の芸術を味わうことによって、必ずやひとりひとりの仕事や生き方の中に、日本人として大切なものを育むことができるようになると思っております。

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